旬の素材を使った和風スイーツ「旬果瞬菓 共楽堂」

継-TSUNAGU-

“旬果瞬菓 共楽堂”の夏の代名詞といえば「ひとつぶのマスカット」

ひとつぶのマスカットを作るうえでの、
農家さんの想いや、共楽堂のこだわりなどをご紹介

夏に煌めく珠玉のブドウ

共楽堂「ひとつぶのマスカット」に使用しているのは、岡山県産「マスカット・オブ・アレキサンドリア」。その歴史は長く、あのクレオパトラも愛したと言われていることに因んで“果物の女王”とも呼ばれています。
爽やかな甘さが人気なのはもちろんですが「マスカット・オブ・アレキサンドリア」の最大の特徴は、その「香り」。パリッと口の中で弾けた瞬間に、上品で爽やかな芳香が鼻に抜けて広がります。マスカット・オブ・アレキサンドリア独特の芳醇な香りは、他のどんなブドウと比べても格別です。

全国生産量の95%を占める最大産地「岡山」

「晴れの国」と呼ばれ、降水量1ミリ未満の日が年間276.7日と全国1位の岡山県。
日照時間が長く温暖な気候が栽培に適していたことに加え、その後の温室技術の確立により日本における「マスカット・オブ・アレキサンドリア」の一大産地になりました。
また、岡山県はマスカットのみならず、ピオーネや清水白桃でも全国一位のシェアを誇る「くだもの大国」として知られています。

「サンサンファームいちかわ」

JR岡山駅から北西に10㎞ほど、桃とマスカットの産地として名高い一宮地区にあるのが「サンサンファームいちかわ(岡山市北区芳賀)」。共楽堂とは20年来の付き合いがある契約農家で「ひとつぶのマスカット」を作るうえで欠かせない大切なパートナーです。
この度、家族で「サンサンファームいちかわ」を営む市川さんに「マスカット・オブ・アレキサンドリア」を作る上での“想い”を聴いてきました。

市川家は3代で50年以上続くブドウ農家で、2代目の茂さんはこの道45年のプロフェッショナル。
3代目として家業を継いだ真也さんは、今年でマスカットを手掛けてちょうど10年。
「ブドウと桃で育ったようなもの」と語る真也さんにとって、子供の頃のおやつといえば「アレキ」だったとのこと。※マスカット・オブ・アレキサンドリアの通称

「アレキぐらい人の手がかかる作物はない」

そう語る茂さん。寒さの厳しい冬場から、年々酷暑の傾向が強まる夏場まで、温室内の温度・湿度を最適な状態に保ち、土壌に含まれる水分量を見極めながら細心の注意を払ってアレキと向き合う日々が続きます。

また、収穫までに最低でも4回ほどの「間引き作業」を繰り返します。
「いっぺんに粒を減らすのではなく少しずつ様子を見て。一気に間引きすぎると、木が軽くなって木の方が成長してしまい、実に栄養が行き渡らなくなる」

木の状態を日々観察し、収穫時の状態も想定して間引くことで、残した実に栄養を凝縮させていきます。間引きは粒の揃い方はもちろん、味そのものに大きく影響する大切な作業。何度も手を掛けて世話を焼く日々は、茂さんの言葉を借りれば「手のかかる子どもを育てる感じに近い」とのこと。

こだわりの“パリッ”と食感

「共楽堂さんのお菓子には、固めのブドウの方が向いているんじゃないか」
アレキの魅力についての話を伺っていた時に、茂さんの口から出てきた言葉です。

一般に樹木を育てる場合、全体のバランスを考えて枝を切って樹形を整えていく作業(剪定)を行います。ブドウ栽培の場合も、風通しを良くしたり、実のなりすぎや栄養の分散を防ぐためには欠かせません。
さらに、「サンサンファームいちかわ」では、岡山県に多い「短梢(たんしょう)剪定」ではなく、長野や山梨で主流とされる「長梢(ちょうしょう)剪定」という手法を選んでいます。長梢剪定は、それぞれの樹木の特徴を細かく把握して行う必要があり、より経験値が必要な剪定法だといいます。

それでも、茂さんには「熟れるたびに実が固くなって、引き締まっていく。甘さが実にのりやすい」との実感があり、「お菓子にした時もパリッとした食感になる」との思いから、長梢剪定での栽培を続けているとのこと。「ひとつぶのマスカット」の弾けるような口当たりは、農家さんのこだわりや熟練の技術に支えられているのです。

「ひとつぶのマスカット」になるアレキ

「アレキはそのまま食べるなら糖度16度くらいが美味しい。でもお菓子にするには甘すぎる。共楽堂さんの分は、昔から糖度を抑えめで収穫して出荷している」と真也さんが話してくれました。

「ひとつぶのマスカット」用のアレキは、求肥の甘さとのバランスを考えて、アレキ本来の爽やかな酸味を感じられる段階であえて収穫して納品してもらっています。それは、市川さんとのお付き合いが始まった当初に私たち共楽堂がお伝えした要望でもあります。

手がかかる、種もある、それでも「アレキ」を作る

ブドウ栽培の現状について、真也さんが語ってくれました。
「よそが皆さんアレキを作らなくなった。長年マスカットを食べてきた人ほど、アレキの方が風味が良いと言うんだけどね」
かつて「マスカット」と言えば「アレキ」を指すのが当たり前でしたが、種のないブドウが好まれるようになった近年では「シャインマスカット」が頭に浮かぶ方が多くなっているのかもしれません。実際に「マスカット・オブ・アレキサンドリア」の生産量は25年前に比べて10分の1以下にまで減少しているのが現実です。

「食べる人にすれば種がない方がいいかもしれんけど。あの香りや酸味は種があるからこそ実現する。コクとかね。」と真也さん。アレキの場合、種を抜く処理をすると長所である香りが損なわれてしまうため、あえて種を残し、その芳醇な香りが引き立つようにしています。
消費者には敬遠されがちな種ですが、甘さが勝ちすぎず、かつ爽やかな風味と香りを併せ持つ「マスカット・オブ・アレキサンドリア」本来の美味しさを生み出すには「種」も大切な要素なのです。

農家さんと共に歩む「ひとつぶのマスカット」

市川さんをはじめとした農家さんが、我が子を慈しむように手塩にかけて育てあげた「マスカット・オブ・アレキサンドリア」。私たち共楽堂は、その思いを「継(つな)ぎ」、心を込めて一粒一粒、「ひとつぶのマスカット」に仕上げています。今回、市川さんの作物への熱意を目の当たりにし、その結晶である美しく香り高いマスカットを前にして、私たち自身もその思いに応えられるお菓子をお届けし続けていきたいと切に思います。

共楽堂の原点は「ひとつぶのマスカット」。
ずっとこの先も変わらず、共楽堂はこの味を「継(つな)いで」いきます。